公開3日で政府に止められたAI「Fable 5」の話 ~Anthropic社がキレてる件~
2026/06/24

こんにちは!ZetaLink株式会社です!
弊社ではClaudeを導入しており、その提供元のAnthropic社で、なかなか香ばしい事が起きました。
ざっくり言うと「Anthropic(Claudeを作ってる会社)が、出したばかりの最新AIを米政府の命令でいきなり全停止させられた。しかも声明文がうっすら喧嘩腰」という話です。技術ネタとしても政治ネタとしても面白いので、軽く解説します。
そもそも「Fable 5」「Mythos 5」って何?
今回主役になっているのは、Anthropicの新世代モデル2つです。
- Mythos 5:めちゃくちゃ強い本体モデル。特にソフトウェアの脆弱性を見つける能力が高く、「何十年も見つかっていなかった穴」すら掘り出せるレベル。あまりに強力なので一般公開はされず、Project Glasswing という枠組みで政府や一部の選ばれた組織だけが使える。
- Fable 5:Mythos 5と中身は同じだけど、サイバーセキュリティやバイオなど危険分野の出力をブロックする安全装置(classifier)を被せた一般公開版。ヤバい質問が来ると、無難なモデル(Opus 4.8)に投げて受け流す仕組みも入っている。
イメージとしては、Mythos 5 = リミッター解除のスポーツカー、Fable 5 = 公道用に速度制限をかけた市販モデル、という感じです。両方とも 6月9日に発表されたばかりでした。
何が起きたのか
発表からわずか3日後の 6月12日(金)の夕方頃、米商務省が「国家安全保障上の懸念」を理由に輸出管理の指令を出しました。
内容を要約すると「外国籍の人間には Fable 5 と Mythos 5 を使わせるな」。しかもこの外国籍は、
- アメリカ国外にいる外国人
- アメリカ国内にいる外国人
- Anthropic社内で働いている外国籍の従業員
まで全部含む、というかなり広い網でした。
国籍で利用者をきれいに切り分けるのは現実的に無理だったため、Anthropicは「じゃあもう全員分止めまーす!!」と両モデルを完全停止。※他のモデル(Opus 4.8など)はそのまま使えます
政府側の言い分は「Fable 5の安全装置を突破(ジェイルブレイク)する手口が見つかった」というもの。具体的には「特定のコードを読ませて、その欠陥を直させる」という使い方で、本来ブロックされるはずのサイバー能力が引き出せた、という話のようです。
ここからが本題:Anthropicの声明がちょっと喧嘩腰
普通こういう時、企業は「ご迷惑をおかけしております。当局と連携し速やかに対応します」みたいなありきたりな低姿勢コメントを出すものですが、今回のAnthropicの公式声明は、謝罪しつつ言いたいことはハッキリ言うスタイルでした。要点を意訳すると、だいたいこんなテンションです。
「数千時間もレッドチーミング(攻撃テスト)したけど、全部突破できる「万能ジェイルブレイク」なんて誰も見つけてないよ?」
「今回指摘されたのは、特定の状況でしか効かないかなり限定的な抜け穴。これで世界中の何億人も使ってる商用モデルを丸ごと回収しろっていうのは、さすがに筋が違うでしょ。」
「その理屈を業界全体に当てはめたら、もう誰も新モデルを出せなくなるよ?」
そして、ここが一番の見どころ。
「ていうか、その同じ手口、OpenAIのGPT-5.5でも普通にできるんですけど?」
「なんであっちはお咎めなしで、うちだけ止められるの?」
という、例の「GPT-5.5はいいのに、なんでウチはダメなんや」が公式文書として出てるんです。大人の会社のプレスリリースとは思えない直球で、これが妙に面白い。
Anthropicがなぜあそこまで強気な声明を出したのか
調べてくとAnthropic、キレるだけの事情が大きく3つあるかと思います。
1点目は、IPO(株式公開)の準備中だったこと。機密ベースで上場申請を出したばかりのタイミングで、評価額は約9650億ドルとも言われる中、「政府にモデルを名指しで止められる会社」という印象は投資家受けが最悪なので、黙っていられなかった、という話。
2点目は、今年すでに政府と揉めていたこと。少し前に国防総省(DoD)から「サプライチェーン上のリスク」認定を受けており、これは本来敵対国向けに使われるような重い指定で、Anthropicは訴訟で争っている最中。
3点目は、自分で「AIは危険だよ!」と宣伝してきたツケ・・・
あるセキュリティ研究者が「プレスリリースのたびに自社製品を兵器級だと言い続けていたら、いつか政府に本気で受け取られるぞ」と皮肉っていた、という指摘。安全性アピールが裏目に出た。
で、我々の業務に影響はあるの?
ほぼ無いです。
止まったのは Fable 5 / Mythos 5 だけで、Claude Opus 4.8 など通常のモデルは普通に使えます。業務でClaudeを使っている分には、今のところ実害はありません。
(ただし、もしAPI経由で claude-fable-5 のような特定モデルを名指しで組み込んでいるシステムがあれば、そこは止まります。社内でそういう使い方をしている箇所が無いかだけ、念のため確認しておくと安心です。)
まとめ & 今後の見どころ
- 最新AI「Fable 5 / Mythos 5」が、公開3日で政府命令により全停止
- 理由は「限定的なジェイルブレイクが見つかった」という国家安全保障上の懸念
- これに対しAnthropicは**「他社モデルでもできるのに、なんでウチだけ」とやや喧嘩腰の反論**
- 6月下旬時点でまだ復旧していない。議員からは指令の法的根拠の開示要求も出ており、交渉が続いている状態
AIの性能競争だけでなく、「国がどこまでAIを武器として規制するのか」という、これからの業界を占うような一件です。気になる人は以下リンクから確認してください。
- Anthropic公式ステートメント:https://www.anthropic.com/news/fable-mythos-access
- 稼働状況:https://status.claude.com/
個人的には、ツールの良し悪し以前に「地政学リスクでいきなり使えなくなることがある」という点が一番の学びでした。便利なクラウドサービスほど、止まる時は一瞬で止まる。バックアップの選択肢は常に持っておきたいですね。
※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとにしています。状況は流動的なので、最新情報は上記の公式ソースでご確認ください。